『海』をテーマにした美しいタロット、「セイレーンズ・メロディ・タロット（A Siren’s Melody Tarot）」の紹介です。2020年、キックスターターを経て個人での発売が開始されました。
セイレーンはギリシャ神話に出てくる、人魚のような姿をした海の魔物（ただし翼も生えていることが多い）。この世のものとは思えない美しい声で人間の心を惑わし、海中へと引きずり込みます。男たちを次々に誘惑しては搾取する甘美な女性の象徴のようでもあります（寄るな危険）。
絵柄紹介
カラーの使い方が印象的です。細かい図柄が描かれているというよりは、色遣いと抽象的なイメージで各カードの世界観が表現されています。
大アルカナ
カードの周囲は黒の縁取り。12番の吊るされた男は「The Hanged One」と表記されています。一般的なタロットでは「The Hanged Man」ですが、このデッキでは性別の固定をしていません。
個人的には、20番の審判の絵柄が怖いです…どうしてこうなった。
小アルカナ
スートごとに、カード周囲の色合いが異なっていて見分けやすいです。文字は極力少なくデザインされ、スート名と番号（ローマ数字）のみです。
コートカードも同様に数字での表示。ペイジは11（XI）、ナイトは12（XII）、クイーンは13（XIII）、キングは14（XIV）です。ただし、コートカードには他にも王冠等のシンボルが下部に描かれていますので、文字無しでも分かり易いよう工夫されています。
概要・特徴
サイズは実寸で 69 mm × 121mm。一般的なRider Waite版通常サイズと同じです。
作者は米国のLauren Sleeperさん。このデッキは４種類の異なるバージョンが販売されています。①通常版（キーワードなし）、②通常版（キーワードあり）、③デラックス版、④ミニデッキ、です。このページで紹介しているものは①の通常版（キーワードなし）です。
②のキーワードあり版は、カードの下部にキーワードが書かれています。下の写真の左側は①キーワードなし版、右側が②キーワードあり版です。
③のデラックス版は、裏面デザインに金色の装飾が施されており、キラキラと反射してとても美しいです。通常版を購入した際にサンプルが１枚入っていたので、通常版と比較した写真を載せておきます。下の写真の左が①通常版、右が②デラックス版です。
ご覧のとおり色合いも異なっており、通常版が青、デラックス版は緑です。左の通常版で金色に見える部分は、金色の加工ではなく金色っぽい色で描かれているだけで、反射はしていません。
④のミニデッキは手元にありませんが、だいぶ小さく、キーワードなしです。裏面デザインも通常版とは異なっています。
説明書は冊子ではなく、一枚の紙が同封されています。表と裏の両面印刷になっており、全カードのキーワードが正逆とも３個ぐらいづつ書かれています。
使用感
気に入ったところ
海をテーマにしたタロットを探していました。大手販売店から発売中の海系のタロットは、絵柄が子供向けだったり、ヘタウマ落書きのようだったりして購入には至りませんでしたが、このデッキが発売されたことを大変うれしく感じています。
紙質はやや厚め、高級感があります。表面、裏面、ともにマットな手触りで、ろうそくに触れているような不思議な感触です。作者のサイトには「ベルベット仕上げ」という説明があります。印刷もとても美しい仕上がりです。エッジのゴールド装飾等はありません。
イマイチなところ
悪い部分は思いつきませんが…(笑)
あえて挙げるとするならば、デザインが抽象的で本来の意味との関連が分かりづらいカードはあります。とはいえ、こういった個人販売のオリジナルデッキはそもそも、ライダーウェイト版とは異なる独自解釈の表現を求めている人たち向けと思いますので、むしろ私は歓迎です。独自解釈に抵抗がある人はライダーウェイト、トート等の基本デッキのみ使うのがよいと思います。
説明書が冊子ではないので、物足りなく感じる人がいるかもしれません。ただし、難解なシンボルが描いてあるわけでもなく、絵柄自体はわかりやすいものなので問題は感じないと思います。説明書に書かれているキーワードは、ごく一般的なものです。
ちなみに小アルカナの各スート1番目のカードは一般的にAceと呼ばれますが、付属説明書では「ONE」と表示しています。コートカードも、カード面と同じくELEVEN～FOURTEENで表示されていますので、若干のとまどいを感じるかもしれません。
購入場所
2020年末現在、作者のサイトでの個人販売のみです。私はEtsyの作者サイトを通じて購入しました。当時たまたまセール中で6千円ぐらいでした。異なるバージョンのセット販売もあるようです。
ただし残念ながら2021年1月現在、日本への出荷は中止となっているようです。またいつか出荷が再開されるかもしれませんので、気になる方はまめにサイトをチェックしてみてください。
おわりに
個人販売デッキの場合は、詳しい情報があまりネットにないため、参考までに紹介動画を作ってみました。全カードを淡々とめくって紹介しています。封筒開封などの無駄なシーンはありません。もしよろしければご覧ください。
