2013年に発売されたイギリス製のタロットを全3回に分けて紹介します。全78枚あるデッキのうち、今回はまず大アルカナ22枚を紹介し、残りのカードは次回紹介します。


絵柄紹介(大アルカナ)
全体的にとても穏やかな印象のデッキ。むしろ、どことなく陰鬱さすら感じさせる静けさです。
0番Fool 〜6番Loversまで
左上は、カードの裏面のデザインです。色合いや採色の感じが独特で、古い油絵の具がところどころ剥がれかけているような、そんなアンティークな雰囲気が出ています。1番Foolは鏡に道化師が映っているようなデザイン。5番Hierophantは”Pope”となっています。6番Loversは左右に二人の女性の顔が描かれています。
7番Chariot 〜14番Temperenceまで
8番はJusticeになっています。鏡の前に天秤が置かれています。淡い色合いのデッキの中でも9番Hermitの赤はひときわ印象的です。11番は”Fortitude”(不屈の精神)となっています。13番死神のカードには文字が書かれていません。それが余計に余韻を残しているように感じますが何か特に思うところがあったのでしょうか。今となっては知る由もありません。
15番Devil 〜21番Worldまで
15番Devilのカードは鏡に何かもやもやした影が映っています。鏡をのぞいてごらん、悪魔はほかでもない、あなた自身の心の中に住んでいるんだよ、と言っているように感じます。17番Starは夜ではりませんが、水を滴らせているライオンの周りに六芒星が見えます。
小アルカナは次回
以上が大アルカナです。絵柄はRider版にほぼ準拠しており、わかりやすいと思います。
概要・特徴
製作者の個人サイトで販売していた
イギリス人の製作者本人が個人サイトで販売されました。2,000個のみの数量限定販売です。タロットのほかにルノルマンカードも同系統のデザインのものを販売していました。ちなみに商標の「Malpertuis」は、作者名ではありません。
同梱されているものはカード1セットのみです。解説書の類は何もありません。ただ、本来なら購入者一人ひとりに対して、素敵な絵柄のカードや2,000個のうちの何番めかが明記された証書がもらえるはずでしたが、後述する理由により私のものには入っていません。
サイズ・価格
サイズは70mm × 120mm。一般的なRider Waiteスタンダード版とほぼ同じ大きさです。
価格は当時、日本円換算で1万円程度(海外送料含む)。個人製作デッキとしては特に高価というわけではありません。
ホームページには、製作者がこのカードを作るにあたって心がけたことや、自身が思い描く基準を満たす印刷業者の選定に大変苦労したこと、完成間際にハードディスクが損傷してデータがすべて吹っ飛び、また最初から作り直したエピソード等が紹介されていました。紙質からも、品質にこだわりを持って作られている感じが伝わってきます。
カードの周りには金色の縁取りが施されています。
使用感
気に入ったところ
何といっても一番はこのデザインです。落ち着いたアンティークな雰囲気と、ツイードのようなパッチワーク風のデザインが、カード柄の外側にも施されています。
材質はプラスチックカードでしょうか。質感もよく、サラサラして滑りが良いです。フチの金色装飾も美しいですが、何度も使ううちに少しずつ剥げてきました。
イマイチなところ
繊細な絵がこのデッキの最大の魅力なのですが、それは同時に見にくいともいえます。色合いがとても淡いので、とくに薄暗い部屋などでは、何が描いてあるのかサッパリ見えません(汗)。
そのようなこともあり、初めてタロットを使う方には扱いづらいかもしれませんが、絵柄自体は基本的にRider版に忠実な解釈だと思います。
今でも手に入る?
残念ながら、製作者は2018年に急死されました。現在はホームページも閉鎖されています。
新品
正直、新品での入手は難しいかもしれません。
私の注文もご遺族がご対応くださったものです。支払後に商品が届かないため、調べていたところ製作者のフェイスブックでご遺族の告知を見つけました。製作者が亡くなった事を知らない他のユーザーからも注文が続いたため、しばらくはご遺族が在庫対応してくださいました。カード購入者に配布されるはずだった作者のデザインカード等の特典が私に届かないのは、そういう理由のためです。今はホームページが閉鎖されているため、公式サイトでの注文はできなくなっています。
このカードを見るたび、作者のNeilさんが一枚一枚の絵柄に一体どんな気持ちを込めていたのだろうと、考えを巡らさずにはいられません。
【追記:2021/6/13】著者のご遺族により販売サイトが復活し、現在2ndエディションが限定2000部で販売中です。オリジナル版との違いは、カードエッジ部分のコーティングが銅色になったことと、箱に2nd Editionと明記されている点です。気になる方はぜひサイトを訪問してみてください。
中古
カード名で検索すると海外のマーケットに中古が出ているようです。ただし、価格が相当ぼったくりといいますか、必要以上に高すぎたりしますので、中古での購入をお考えの場合は信頼できる販売者かどうか、十分にお気をつけください。
次回につづく
しばらく毎日のように使っていましたが、現在は保管状態で、たまに箱から出して絵柄を眺めて楽しんでいます。タロットということを抜きにしても絵柄自体がとても美しいので、一枚一枚をひとつの作品として鑑賞するのも楽しいデッキとなっています。
次の記事では、引き続き小アルカナの紹介をします。
動画も作っていますので、もしご興味ありましたらご覧ください。

